アンクル・チャッキーの名盤紹介

私が名盤だと感じるCDアルバムを、次々と紹介していくブログです。読者様の心のどこかに引っ掛かって貰えれば、嬉しいです。

フリートウッド・マック『神秘の扉』

フリートウッド・マック中期の傑作。

 

…というか、フリートウッド・マックの中期の作品群は、どれもが素晴らしい。アルバム名を記すなら、『ゼン・プレイ・オン』、『キルン・ハウス』、『フューチャー・ゲーム』、『枯木』、『ペンギン』、『神秘の扉』、『クリスタルの謎』が、彼らの中期の作品群となる。これらの作品は、以前は手に入りにくかったのだが、2013年に紙ジャケット仕様でまとめて発売されたため、今では割と簡単に手に入れることができるだろう。どれもが、甲乙の付け難い、良質のアルバムである。

 

その中で、今回このアルバムを紹介するのは、このアルバムの1曲目、「エメラルドの瞳」が今朝、夢の中で流れていた、というだけのことである。「は?」という感じですね、はい。

 

スティーヴィー・ニックスリンジー・バッキンガムがメンバーになる黄金期、ピーター・グリーンを中心にバリバリのブルース・ロックを聴かせていた前期の間に挟まれて、見過ごされがちな時期であるが、このべたべたしないカラっとしたポップセンスは、何度聴いても心地よく体の中に入ってくる。

 

ミック・フリートウッド(ドラムス)、ジョン・マクヴィー(ベース)というこのバンドの屋台骨の上に乗っかって、この時期特に魅力を放っていたのは、ダニー・カーワンとボブ・ウェルチという2人のギタリストである。2人とも後にソロでアルバムを出すことになる、メロディ・メイカーでもある(ちなみに、これらのソロ作品も、紙ジャケ化されているので、要チェック。)。

 

この頃の彼らの音楽を位置付けしてみれば、ロックとポップスの中間ぐらい、と言えるだろうか。ピーター・グリーンが脱退したことで、前期のブルース色は薄れ、彼らがメンバーになったことで、ポップ色が強くなっている。その2人のギタリストに加えて、このバンドに爽やかさを加えているのが、クリスティン・マクヴィーである。彼女の透き通るような歌声は、このバンドの、特にこの時期の、一つの「核」となっている。彼女は、このバンドのもう一人の「屋台骨」である。

 

…まあ確かに、バカ売れするような音楽ではないですよ。「フリートウッド・マック」という、数奇な運命を辿るバンドの経過した一時代であるからこそ、音楽的には特筆するべきところがほとんどないのに、こうやって耳にする機会がある、というだけのことかもしれない。

 

だが…、私は、この時期の彼らが、猛烈に好きなのである。「良心的な」音楽。「奇を衒わない」音楽。「安心して聴ける」音楽。…う~ん、色々と誉め言葉が浮かんで来てしまう…。まあ、こと音楽に関しては、好き嫌いというのは、ほとんど理屈を超えたところにあるような感じもしますけどね。

 

夢の中の話。某バラドルさんが、「私は、フリートウッド・マックが好き。」と言って、私と意気投合するという内容。「バラドル」という言葉が、何とも時代を感じさせる。別にそのバラドルさんのファンとか、そういうの何もないんですけどね。夢に出てくる、ということは、少しは気になっていたんでしょうか…。

 

夢の中にそういう風に出てきたということで、改めて自分はこのバンドが好きなんだなあ、と実感し、こうやって筆をとった次第であります。押し付けがましさの無い音楽なだけに、ついついことあるごとに、この時期のアルバムに手が伸びてしまう。「ポップス」というのは、こういう姿勢であるべきだ、と思うんですよね。つまり、媚びを売るようなキャッチーさで、耳にずかずかと入り込んでくるのではなく、聴き手の方からすり寄っていってしまうような、そういう「安心感」を与えてくれる音楽、というかね。

 

大好きになるかどうかは別として、誰にとっても「拒否」されるような音楽ではない、と思う。そして、一度のめり込めば、どこまでも聴き込める、「深い」音楽である。騙されたと思って、是非ご一聴を。