アンクル・チャッキーの名盤紹介

私が名盤だと感じるCDアルバムを、次々と紹介していくブログです。読者様の心のどこかに引っ掛かって貰えれば、嬉しいです。

ジョニ・ミッチェル『ドンファンのじゃじゃ馬娘』

ジョニ・ミッチェルのアルバムは、どれもが名盤なのだが、今回これを選んだのは、完全に気分である。

 

このアルバムのベーシストは、あのジャコ・パストリアスである。前作と次作、『逃避行』と『ミンガス』にも彼はベーシストとして参加しているのだが、どれも実に、良い。彼のベースの音は、ジョニの歌に実に合っているのである。

 

ジャコ・パストリアスは、ベーシストとして、唯一無二の存在である。ベースの音を聴いただけで、ここまですぐに「この人が弾いている」ということが判ってしまう人は、そういないのではないか。ほんと、ベースという楽器で、ここまで独自性を打ち出せた人は、他にいないといっていいだろう。

 

ジャコと言えば、『へヴィー・ウェザー』を始めとする、ウェザー・リポートでの諸作品、ソロでも(数少ないが)名作を残している。だが、ジョニ・ミッチェルのアルバムに参加したこの3作品も、彼の代表作だと言っていいだろう。

 

ジョニ・ミッチェルと言えば、カナダ出身のシンガーソングライターだが、ジャズにも造詣の深い人物である。特にこのアルバムでは、ジャコを始め、ラリー・カールトン(ギター)、ウェイン・ショーター(サックス)、アイアート・モレイラ(パーカッション)といった、一流のフュージョン周辺のプレイヤー達を贅沢に起用し、ジャズ色を強めているが、そこはジョニの作る音楽。最上級のポップ音楽に仕立て上げられている。

 

その中で、やっぱり一番煌めいてる音が、ジャコのベースなのである。果たして、ジャコのベースプレイを聴いて、ベースを始めた人が、どれだけ多くこの世の中にいるのだろうか。ベースが、曲の主役になることができるのだ、と、どれだけ多くのベース・プレイヤーを励ましただろうか。

 

私も一時、ジャコ・パストリアスが、世の中に数多いるミュージシャンの中で、最もヒップでクールなミュージシャンだとして、ぞっこんになって聴いていた時期があった。…ただ、あまりにその天才性に支えられたプレイを今聴くと、はなから勝負しようという気が起きなくなってしまうのも事実である。真似しようと思っても、到底たどり着けないくらいの境地にいる人なのだな、と思ってしまう。その破滅的な人生も含めて、実に語るべきところの多い、今でも気になってしょうがないベーシストではあるんですけどね。

 

…ということで、ジョニよりも、ジャコを中心に書き進めてきてしまったが、やっぱりこのアルバムの本家本元の主役、ジョニ・ミッチェルは、只者ではないのである。もしかしたら、ミュージシャン(特に女性)の中で、最もリスペクトされている女性アーティストは、このジョニ・ミッチェルなのではないか。若き時代から、すでにベテランの風格。ベテランになってからは、音楽のジャンルを超えた、スーパー・ミュージシャンになってしまったジョニ。ジャコを始めとする、その時代のトップ・アーティストたちを軽々と従えることができてしまったところも、女性たちの羨望の的となったのでありましょう。

 

ただ…、ここまでやられると、自分の場合、ちょっと……。…と、余計なことまで言ってしまいました(笑)。まあ、何は無くとも良い音楽なので、是非聴いてみてください。