アンクル・チャッキーの名盤紹介

私が名盤だと感じるCDアルバムを、次々と紹介していくブログです。読者様の心のどこかに引っ掛かって貰えれば、嬉しいです。

イエス『危機』

「色」が主張する名盤 その②

 

 

危機(紙ジャケ SHM-CD)

危機(紙ジャケ SHM-CD)

 

 

 

緑です。「緑」の名盤と聞いて、どれだけ多くの人が、この『危機』を思い出すだろうか。それ程有名な、「緑」の名盤です。

 

 

さて、イエス。日本では結構、人気のあるプログレ・バンドである。このブログでも、ちょろっと登場したことがありましたね。とにかく、メンバー変遷の激しいバンドなので、時期によって音が色々と変化して、飽きずに聴けるバンドであると思う。

 

とは言っても、やはりベストなメンバーの揃っている時期が最も聴きどころなわけで、その時期こそが、『こわれもの』と、今回の『危機』の2枚の時、ということになるわけです。

 

この2枚の時のメンバー~~~ヴォ:ジョン・アンダーソン、べ:クリス・スクワイア、ド:ビル・ブルーフォード、ギ:スティーヴ・ハウ、キ:リック・ウェイクマン、である。

 

ちなみに、ヴォ→ヴォーカル、べ→ベース、ド→ドラムス、ギ→ギター、キ→キーボード、である。全部書くなら、最初から書け。

 

それにしても、…う~ん、穴が無い。まさしく、ベストな顔ぶれである。御大、ジョン・アンダーソンと、リーダー、クリス・スクワイアは、割とずっとこのバンドに在籍しているのだが、ビルとスティーヴとリックが揃うのは、この時だけである。特に、ビル・ブルーフォード…。この『危機』を最期に、バンドを脱退してしまう。後任として、アラン・ホワイトが加入するわけだが、ビルと比べると、どうしても見劣りしてしまう感が強い。

 

このアルバム、プログレッシブ・ロックを代表するアルバムなわけで、収録曲は、たったの3曲。「危機」、「同志」、「シベリアン・カートゥル」、これだけである。曲数が少ないということは、それだけ曲の長さが長いというわけだが(A面は「危機」のみ)、その長さを感じさせない、曲構成の妙。久々に聴いたけど、やっば凄いな、このアルバム。

 

イエスというバンドは、プログレ・バンドの中でも、情緒で聴かせる、というよりは、テクニックで聴かせるバンドである。それだけに、「かっこよさ」を感じる。それぞれの楽器が、有機的に絡み合いながら、曲がどんどん進行していく。全く無駄が無いのである。

 

…それにしても、気持ちいいだろうなあ、と思う。この人たち。それぞれの楽器の名手がこうやって集っているわけで、本人たちにとってみれば、自分以外のプレイヤーも、物凄いプレイヤー達なわけである。実力的に拮抗している人たちが集まっているわけで、自分が最高のプレイをすれば、周りのみんなも最高のプレイで合わせてくれるのである。いや、バンド冥利に尽きると思いますよ、この人たち。バンドなんて、十中八九、実力的にもまちまちで、音楽的にもあまり合わない人同士で組んでしまうような感じが常であるわけで、誰もが夢見る、バンドというチームプレーの、いわば「理想形」を体現してしまっている、この時期のこの5人。バンドマンなんか、よくこんな風に思うわけですよ。「自分が複数人いて、その複数いる自分だけでバンドを組めたらなあ。」なんて。要するに、他人と合わせるということは、非常にストレスがたまるわけである。自分の要求通りに動いてくれる他人なんて、百中九十八九十九いないわけである。バンドマンなんて、常にそういったフラストレーションを抱えながら生きている生き物なんだが、この時期のイエスは、音楽史上でも稀に見る、実に纏まりのある、実力的に偏りのない、いかにもバンドらしい、ありそうでほとんどあり得ないバランス状態の、ロックバンドであったのである。

 

私も以前は、こんなバンドの一員になることに、強く憧れたもんである。おっと、私は別にバンドマンではないですよ。バンドマンというものに、強い魅力を感じる、単なる音楽好きの30代男であるに過ぎない。しかしなあ。男子なら憧れるでしょ。この時のイエスみたいに、自分が凄いプレイヤーの一員になって、チームプレーで物凄いものを産み出していく、みたいな。

 

…というわけで、相変わらずこのアルバムを聴くと、羨望の眼差しを彼らに送ってしまうのだが、とりあえず今回はこの辺で。この、「色」シリーズ、果たしてどこまで続くのか??……次回は、「赤」かなぁ…。