アンクル・チャッキーの名盤紹介

私が名盤だと感じるCDアルバムを、次々と紹介していくブログです。読者様の心のどこかに引っ掛かって貰えれば、嬉しいです。

柴咲コウ『蜜』

女優であり、歌い手でもある、柴咲コウ。多才な人である。

 

 このアルバムは、その柴咲コウの歌手としてのデビュー・アルバムであり、私はリアルタイムでは聴かなかったのだが、最近になって聴いてみて、びっくらたまげたのであった。

 

柴咲コウと言えば、このアルバムにも収録されている「月のしずく」や、「かたち あるもの」などが、よく知られているところである。

 

柴咲に関して私が最も惹き付けられるのは、その詞世界である。柴咲の歌う曲は、そのほとんどが柴咲自身が作詞をしているのだという。

 

その世界観は、このアルバムで特に顕著なのだが、遥か昔の、日本の和歌の世界である。このアルバムの中の1曲、「浮雲」では、百人一首から、言葉を引用している部分がある。その部分が、実に耳に残るのである。

 

そこから、判ることがある。「恋愛」というのは、昔も今も、変わらないものなのだなあ、ということである。多分、柴咲自身、恋多き女性なのであろう。柴咲が歌うのは、10代のキャピキャピしたラヴ・ソングではない。多分に「普遍性」を纏った、大人の恋の歌である。

 

 

…なあんて書きながら、一抹の恥ずかしさを感じないわけではない、私である。私が「普遍的な恋」なんて言葉を出すこと自体、百年早いと思うわけだが、なんというか、実に勉強になるんですね。柴咲のニュートラルな歌声が、そういう昔も今も変わらない人間の機微を、実に巧みに描き出しているような気がするわけです。

 

例えば、演歌にしても、世の歌謡曲は、結局は、そういうことを歌っているわけである。そういうことって、みんな興味のあることなんであり、掴みどころがあるようで、ないような、まあみんなが一度は考える命題なんであり、柴咲はそういうのを、結構真正面から歌っているのである。

 

 

冒頭でも述べた通り、柴咲コウは女優でもある。私は、ドラマとか映画とかを、そんなに観る方ではないので柴咲の演技がどうか、とかを語る術を持ってないのだが、やっぱそういう別の世界を知っていて、音楽という舞台で歌う彼女のような存在は、非常に貴重だと思うわけです。どちらの世界でも、第一線なのですから。凄いと思いますよ、実際。一つのことを極める人というのは、他の分野に手を出しても、割と軽々とやってのけてしまうことが出来てしまうのだなあ、と思ったりしてしまう。いや、実に尊敬できてしまう、姐さんである。

 

 

…ところで、このアルバムが出たのって、2004年だから、このときコウさん、20代前半!?…ありえへん。生まれ持った、「大人の女性」の気質があるんでしょうかね、この方。自分の20代前半の頃のことを振り返ると…。…いや、ちょっと…、顔伏せたい(笑)。

 

いやあ、スターというものは、なるべくしてなるもんです。女優としての顔も持ち、実に日本的でありながら、反面ちょっと日本人離れした才能を持つ、彼女の詞世界、歌声、一度堪能してみてください。

 

 

 

蜜