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アンクル・チャッキーの名盤紹介

私が名盤だと感じるCDアルバムを、次々と紹介していくブログです。読者様の心のどこかに引っ掛かって貰えれば、嬉しいです。

デヴィッド・ボウイ『ステイション・トゥ・ステイション』

お亡くなりになってしまいました。デヴィッド・ボウイ様。

 

非常に残念なことではありますが、彼の残した足跡というものは、とても価値のあるものばかりで、「グラム・ロック」という一時代を築き、その後もアメリカン・ソウルに接近した時期、ベルリン時代と呼ばれる、ブライアン・イーノと組んだ諸作を経て、『レッツ・ダンス』というヒット作を出すまでの彼は、もう「完璧」という言葉がぴったり当て嵌まるような、キャリアであったと思う。

 

 

その中で、今回『ステイション・トゥ・ステイション』を取り上げようと思ったのは、何のことはない、いつかこのアルバムのことを書きたい、と思っていたからであり、それが(悲しいことではあるが)こういう形で機会を得た、というだけのことである。

 

このアルバムは、ボウイの中期の最高傑作である、と言われる。ボウイが、アメリカン・ソウル、つまり黒人音楽に接近した時期のことである。

 

デヴィッド・ボウイは、きわめて白人的な人である、と思う。英国人なだけあって、風貌は紳士的(スーツがよく似合う)、知的な雰囲気も醸し出している。『ジギー・スターダスト』の頃などは、山本寛斎がデザインした、日本の着物をモチーフにした衣装を着るなど、それこそバリバリに弾けてはいたが、一貫して感じることは、静かな、口数少ない、クールな感触である。間違っても、悪ふざけをしたり、悪ノリしたりする感じではない。

 

そんな彼が、黒人音楽をやるとどうなるか。

 

その答えの全てが、1曲目の「ステイション・トゥ・ステイション」にありありと顕れている。この、10分12秒の、大曲!もうとにかく、この曲を聴いて欲しい。つまり、ボウイなりのファンクの解釈なのであろうが、ボウイがファンクをやると、こういう風になってしまうのか、という驚きと、不思議な感触に包まれた、名曲でありながら、珍曲である。

 

この曲は、印象的なメロディーが、次々と展開していく、ある意味ジェットコースター曲である。そして、キーとなるのが、「痩せた白人の公爵(シン・ホワイト・デューク)」というキャラクターである。

 

彼は、アルバム毎に、「ジギー・スターダスト」、「アラジン・セイン」、「ダイアモンド・ドッグズ」といった、新しいキャラクターを身に纏い、「デヴィッド・ボウイ」ではない、別の人格として、それぞれのアルバムの世界観を作り出してきた。そこら辺は、俳優としても活躍した、彼の性質の原点であったと思うのだが、そういう演出が、逆に一風変わった彼の特徴となっていた。「戦略」とも言えるのかもしれないが、「次はどんなキャラクターが…。」という期待は、当時のファンにとっては、一大事件であったことだろう。

 

そして、この「シン・ホワイト・デューク」。新しいキャラクターの一つであったに過ぎないが、妙にデヴィッド・ボウイ本人の姿に重なる、キャラクターである。そこには、自分の姿を身に纏ったような、ボウイの姿がある。これはきっと、黒人音楽に触れたことで、改めて「白人である」という、自分の実像というものを観察することが出来たのだろう。

 

 

この「ステイション・トゥ・ステイション」という曲は、意外なところで、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの名曲、「カリフォルニケイション」に登場する。「Cobain can you hear the spheres singing songs off station to station」という一節である。「Cobain」とは、1994年に自殺した、ニルヴァーナのボーカル、カート・コバーンのことである。意訳すれば、「ラジオ局で次々と流れてくる君の歌が、天国から聴こえるかい?」というような感じになるのかもしれないが、最後の「station to station」という部分は、深読みすると、デヴィッド・ボウイのこの曲のことを暗に指しているのではないか、と思わずにはいられないのである。

 

片や自殺、片や天寿を全うしたわけだが、両人とも、ロックの一時代を築き、その背負ったものの大きさは、常人には計り知れないものであったと思う。カート・コバーンの自殺の理由としてよく語られるのが、思いもかけず自分が大スターになってしまい、自分のアイデンティティーを維持できなくなってしまったのではないか、というものである。これも深読みに過ぎないが、レッチリは、コバーンに向かって、「何も死ななくてもよかったじゃないか。あのボウイのように、次々と自らを別のキャラクターに着せ換えて、上手く生きていくこともできたんじゃないか?」と、語りかけているようにも見える。

 

 

とにかく、デヴィッド・ボウイがロック界に残した痕跡は、とてつもなく大きかった。音楽も、特別な響きを持った、独特のものだったが、ライブも非常に魅力的なものだったらしい。ミュージシャンの中でも、デヴィッド・ボウイのライブが、今まで見たライブの中で、一番素晴らしかった、と語る人も多いと言う。ライブ映像もいくつか出ているようなので、その魅力を、今でも十分堪能することもできるようだ。

 

時代に風化しない、永遠のアイドル。男の子も女の子も夢中にさせる、妖しい魅力を身に纏った、稀代のスーパースター。

 

彼はもうこの世には存在しないが、彼の作品は、永久にこの世に残る。彼の生き様の記録を、もう目に、耳に、叩き込んでやろうじゃありませんか。天国の彼も、それが一番嬉しいことであるに、違いありません。

 

 

 

ステイション・トゥ・ステイション(紙ジャケット仕様)

ステイション・トゥ・ステイション(紙ジャケット仕様)