アンクル・チャッキーの名盤紹介

私が名盤だと感じるCDアルバムを、次々と紹介していくブログです。読者様の心のどこかに引っ掛かって貰えれば、嬉しいです。

ヴァン・モリソン『アストラル・ウィークス』

前回のBreak Timeの続きというわけでもないですが…。私は、30代前半で、「大人」というものがどういうものかを、真剣に考えるべきことに自覚的になってきた、というかなったばかりというか、であるわけです。

 

だから、どうしてもまだ、上手く自分の発言や行動を制御できない部分がある、とか、自分の判断力に自信がない、など、色々困った部分はあるわけです。

 

「全てのことが解り切った!」と、意味もなく強気になったり、反面「どうして俺はいつもこう…」と、意味もなく意気消沈したりと、ぐらぐらと揺れ動きながらも、一社会人として、毎日の仕事はきちんとこなしていきたいわけで、言ってみれば、気持ちの切り替えに忙しいわけです。

 

まあ、20代の頃に比べれば、そこら辺の切り替えは上手くなっている?ような気もしはするんですが…。

 

 

ということで、ヴァン・モリソン。この人の醸し出す雰囲気は、「大人」、というか、「おじさん」、というか、「何があっても大して動揺しないんやろな。」というような、不動の力強さを感じさせるわけです。

 

で、彼の数多く発表されているアルバムの中で、特に名盤と言われているこの、『アストラル・ウィークス』。このアルバム、「史上最も売れなかった『名盤』」と、言われているそうな。発売されたのが1968年で、以降「歴史的大傑作」等、様々な賛美の言葉を受けているが、現在までに売れた枚数は、世界中で通算して30万枚前後というお粗末な実績。まあ、売れた枚数が、その音楽の素晴らしさに比例するわけではない、ということは明白なことではありますが…。

 

彼は、アイルランドの出身である。アイルランドから世界に羽ばたいたミュージシャンというのは結構いるが、ヴァン・モリソンは、その中でももう「レジェンド」と言っていいぐらいの存在だろう。U2、エンヤ、ザ・コアーズなどと同様に、彼の音楽を聴いて受ける感覚は、一種の「神秘的な感じ」である。もうこれは、アイルランド特有の土地柄のようなものなのだろう。ケルト神話の世界観が、その土地の人々にも今も宿っている、というような感じである。

 

ヴァン・モリソンの不動の力強さも、元を辿ればこういう所にその源泉があるんだろうな、という気がする。キリスト教とかイスラム教などの宗教を心から信仰している世界の人々は、私たち日本人から見ると、何かある種の「力強さ」を感じないだろうか。信仰が「信念」に変わり、その人の絶対の価値観として根付くために、そのような「力強さ」が生まれてくるのだと思う。

 

まあ、歴史的に見ると、こういう宗教上の信仰の違いから、戦争などいざこざが生じてきたわけで、それが完全にいいことなのかどうかは、色々と論争のあるところではあると思うが、ただ、そういう「信念」を胸に持って生きる、というのは、やっぱり生きていく上で必要なことだと思うわけです。

 

自分の場合、他の多くの日本人と同様、何か特定の神とかそういうものを信仰しているわけではないのであるが、なんというか、そういう「超自然的な」何かが、実際存在しているんだろうな、という感覚は何となく持っているのでありまして、むしろそういうものを絶対的に信じている他の国々の人たちを見ていると、一種の羨ましさのようなものを感じないわけではないのであります。

 

 

 

えー、何か宗教論のような調子になってしまったが、この人の音楽を聴いていると、そういう感覚を抱かずにはいられなくなってしまうのであって、やっぱり単なる「渋い」音楽を超えたところに、彼の音楽はあると思うんですね。この『アストラル・ウィークス』と次作『ムーンダンス』は、彼のキャリアの中でも特に有名な名盤で、是非聴いてみて欲しいアルバムです。とにかく彼は、非常に多作で、私自身もちょっとずつ後の傑作にも手を伸ばしていきたいと思っているところであります。

 

 

「大人」には早くなりたいが、「おじさん」にはまだまだなりたくない、まだまだ揺れ動いている状態の30代男が推薦する、「激渋おじさん」の「激渋アルバム」。是非一度手に取ってみてください。