アンクル・チャッキーの名盤紹介

私が名盤だと感じるCDアルバムを、次々と紹介していくブログです。読者様の心のどこかに引っ掛かって貰えれば、嬉しいです。

『ソニー・スティット&ザ・ニューヨーカーズ』

単に、「ジャズ」と言っても、その色合いは実に様々であった。ここ最近でジャズ経験値が少し上がってきたところでの、一つの結論である。

 

私も最初はそうであったのだが、どうもジャズに入り込んでない人々にとって、「ジャズ」という音楽は、みんな同じように聞こえるという傾向があるようだ。まあ、フリージャズだとか、マイルス・デイヴィスの『オン・ザ・コーナー』だとかは、明らかに普通のジャズとは違うことやってるな、というのは判るのだが、その他諸々のジャズのCDは、なんか色合いがどれも同じで、ほとんど区別がつかない、ということが多いのではないか。

 

そういうことがあると、私の場合、逆に燃える。一つの一つ音の違いを、味わい尽くしてみたい、という衝動が生まれてきてしまうのである。で、少し頑張って聴いてみると、いわゆる「ジャズの巨人」と呼ばれる人たちの音楽は、他の人と違うことをやっている。オリジナリティーというか独自性のようなものが、ちゃんとあるのである。「ジャズ」という枠組みの中で、ちゃんと自分の音楽を表現している。そんな印象を受けるのである。

 

さて、今回紹介する、ソニー・スティット。確かに大物なのだが、「巨人」と呼ばれる程には、名前の通っていない人かもしれない。で、この人の音楽であるが、…「普通のジャズ」である。多くの人が「ジャズ」に対して抱いているイメージ、そういうものに非常に近い「ジャズ」だと思うのである。

 

何事も、基本は大事である。人は、難しいことに挑戦して、すぐにでもできるようになりたい、と考えがちなところがある。でも、基本を押さえていない応用は、どこかで必ず破綻が生じるものである。私は、こういうのを今まで生きてきた中で、何度も何度も味わったので、くどくても何度も言います。基本は何よりも大事です。

 

で、このソニー・スティット。ジャズの「基本」を提示しているような気がしてならない。「基本」が「簡単」だと考えるのは、間違いである。「基本」は、「応用」を生み出すための、前段階にあるものであって、どちらが上とか下とかというもんでもない気がする。言ってしまえば、「応用」は小手先の技術でしかないとも言えるかもしれない。

 

何が言いたいのかというと、このソニー・スティット、「ジャズ」を聴くという喜びを、非常に感じさせてくれるアーティストだと思うのである。どこからどう聴いても、奇を衒ったことをしているわけではないし、はっとさせるようなテクニックをひけらかすわけでもない。淡々と、ジャズという音楽を表現している。独自性がないという感じで言ったが、この、まじめに「ジャズの基本」を演奏する、という独自性が、この人にはある気がする。そして、そのレベルが非常に高いことが、聴いていて判る。

 

私は、この人が好きだ。基本に徹している、その姿勢が好きだオリジナリティーを生み出さないそのスタイルでは、「一流」という称号を貰えないかもしれないが、「超二流」という称号を、私は彼に与えたい。その安定感、安心感は、目立たないとしても、もっと評価を与えられるべきもの、と私は思っている。

 

私の目指すべきところも、実はこういうところだったりするのかもしれない。目立たないがいい仕事をする。仕事場を下から支える。…そういう風になりたいもんです。

 

 

ソニー・スティット&ザ・ニューヨーカーズ

ソニー・スティット&ザ・ニューヨーカーズ