マイルス・デイヴィス『ドゥー・バップ』
ジャズの帝王、マイルス・デイヴィスの遺作である。
マイルス・デイヴィスは、モダン・ジャズ以降のジャズ界の最重要人物であり、ジャズ音楽の革新を何度も何度も成し遂げた偉人である。マイルスの音楽は、常に時代を2手も3手も先取りしており、時代の方がマイルスを追いかけているようにも見える。
常にヒップな音楽を創造し続けるマイルスが、最期に選んだ相手は、ヒップ・ホップであった。ジャズとヒップ・ホップ。どちらも、アメリカの黒人文化から生まれた、実に黒い音楽である。それだけに、もともと親和性があったのだろう。2つの異なるジャンルの音楽が、ここでは見事にシンクロしている。
…。……ジャズを語るのって、難しいんですよ。とにかく、ジャズという音楽は難しい。はっきり言って、ロックよりも難しいと思う。即興という要素。独特の複雑なコード使い。慣れてくれば、耳にも心地よい音楽になるのだが、慣れていないと、聴き手を拒絶するかのように、とにかく分かりにくく進行する。自分の中では、ジャズを聴くという行為自体が、ちょっと気合の入る行為であったりする。音楽を聴くなんて、もっとラフに行くべきなんだろうが、自分の場合、ジャズという音楽は、秘境の地のようなもので、辿り着くのには苦労するが、そこに入り込んでしまえば、得も言われぬ陶酔が待っている、というように認識してるんですが、どうでしょう…。
さて、このマイルスの遺作。1991年。マイルスの出生は、1926年だから、60代半ばである。なのに、この音!確かに、円熟味というのは、音楽に表れている。だが、この音楽には、未だ「最先端の音楽を作ってやる。」というマイルスの気概が、十分に感じられる。そして、実際にそういう音として成り立っている。この人は、常に前へ前へ、上へ上へと行こうとする人物なのだろう。そして、その気概を実現させる能力、技術、精神性を持った、いわばパーフェクトな人間である。
…語るのが難しいですね。マイルス・デイヴィス。とにかく多作な人なので、今後も取り上げて紹介していこうとは思います。それと、この作品でコラボしているヒップ・ホップにも、今後チャレンジしていこうと思っています。ヒップ・ホップは、自分には縁のない音楽だと思っていたのですが、まあこういう風に、ジャズを聴いていても、更にはロックにもポップスにも、ヒップ・ホップは入り込んで来ているわけで、無視していられないな、と思い始めているわけです。というか、実際に熱くなるヒップ・ホップのCDもいくつかあるわけで、そういうCDを紹介していけたらな、と思っているわけです。
ちょっと今回は、舌足らずな感じがありますが、今後、時間をかけてジャズ経験値を上げていきたいと思っているので、もっと上手くジャズの良さを伝えることが出来るようになりたいと思っています。ただ、最期に一言言いたいと思います。
マイルスは、死ぬまで何も拒まなかった。