アンクル・チャッキーの名盤紹介

私が名盤だと感じるCDアルバムを、次々と紹介していくブログです。読者様の心のどこかに引っ掛かって貰えれば、嬉しいです。

プリンス『LOVESEXY』

このアルバム、プリンスの人気に翳りが見え始めた頃の作品である。

 

1980年代は、まさにプリンスの時代だったと言える。1980年に『ダーティ・マインド』を発表した頃から、一般に多く認知されるようになった彼は、その後も『戦慄の貴公子』、『1999』と、作品毎にそのテンションを上げていく。

 

そして、『パープル・レイン』。マイケル・ジャクソンの『スリラー』に次ぐ、80年代最強の1枚だろう。この作品は、プリンス本人主演の同名映画のサントラ作品として作られたためか、アルバム全体としての完成度より、個々の楽曲の質の高さに注目すべきであろう。

 

この作品から、『アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ』、『パレード』まで、「レヴォリューション」というバンドを引き連れて、「プリンス&ザ・レヴォリューション」という名義で、作品を発表していく。ここで紹介した2作品は特に、アルバム全体としての完成度が非常に高く、いわゆるところの、「コンセプト・アルバム」と呼んで差支えは無いだろう。

 

続く、『サイン・オブ・ザ・タイムズ』。これは、そのヴォリュームに驚かされる、2枚組である。この作品を最高傑作と推すファンも多い作品である。ただし、あまりポップとは言えないかもしれない。プリンスは、SOULともPOPSとも分類されるアーティストだが、ROCKにも分類されることがしばしばあるのは、このような作品を作ることのできるアーティストであるからだと思う。

 

『サイン・オブ・ザ・タイムズ』で一つの頂点に到達したプリンスは、以後、緩やかに人気が下降していく。『ブラック・アルバム』をお蔵入りにした後、発表されたのが、この『LOVESEXY』である。CDを再生すれば分かると思うが、このアルバムは、1トラックしかない。1トラックの中に、次々と楽曲が再生されていくのである。

 

もちろんポップだ。ソウルフルだ。楽曲の質も以前と比べて全く遜色ないと思える。しかし…。

 

上昇感が無いのだ。若さに任せた、「どこまでも行こう」という気概が、はっきり言えばあまり感じられないのだ。

 

90年代に入り、プリンスは迷走する。アーティスト名を、次々に変更してみたり、CDで3枚組を出してみたり。00年代に入り、10年代に入っても、新作を出し続けるプリンスだが、もう、あの80年代の、キラキラしたプリンスを感じることはできないのだろう。もちろんそれが悪いこととは言わない。それは、「人間の成熟」という言葉で表わされるものなのであろうから。

 

このアルバムは、その音楽性よりも、そうしたプリンスの生き様を強く感じ取ってしまうアルバムなのである。

 

LOVESEXY

LOVESEXY